星の杜の教育・インタビュー

星の杜の新たな教育とは

学校の存在意義(Purpose)に「創造と貢献」を掲げ、大きな学校改革を実践する星の杜中学校高等学校。そこには、教育分野における、同校の2人のキーマンの存在があります。

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石川一郎

宇都宮海星学園
理事・カリキュラムディレクター

「早稲田大学教育学部」卒業。N.Y.での海外生活の後「暁星学園」、「ロサンゼルスインターナショナルスクール」などで教鞭を執る。「21世紀型教育機構」理事や「知窓学舎」ミドルマネージャーなど現在、多くの学校教育改革に関わる。

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石塚千恵

星の杜中学校高等学校 校長

「東京農業大学農学部」卒業後、「海星女子学院中学校高等学校」理科教師として入職。2016年から教頭を経て、22年に校長に就任。「真理と愛に生きる」という普遍的テーマを軸に、社会の変化に合わせた新しい教育の実践に力を注ぐ。

社会で活躍するための非認知能力を伸長する、教科学習と探究学習を実践

星の杜中学校 高等学校の、新しい教育を実現するブルームタキソノミーをベースとした「星の杜メゾット」。今、社会に必要とされる“チェンジメーカー”の育成につながる新たな教育内容とは、一体どのようなものでしょう。石川一郎理事と石塚千恵校長に、星の杜中学校高等学校が実践する教育改革について、対談していただきました。

認知×非認知×デジタルの実践が生んだ新メソッド

石塚 星の杜中学校 高等学校では、社会の変化から感じ取ることのできる「変えてはいけない普遍的な真理」、「変えるべき教育のあり方」、この双方のバランスを大切にしています。この「変えるべき教育のあり方」で今後、当校が実践していくのが「星の杜メゾット」です。今回の大きな教育改革について、今あらためて、石川理事はどのようにお考えでしょう。

石川 はい。当校が推進する「星の杜メゾット」は“認知×非認知×デジタルの実践”で構成されています。まず認知とは、学校でさまざまな知識を得て、それをどう組み合わせていくか、考える力を言います。
実は、現代の教育において、この認知が、あまりにも中心になってしまっているのが問題なんです。認知というのは、テストによって点数付けができてしまうもの。認知、テスト、通知表というサイクルで、学校教育が成り立ってしまっているんです。そこに置き去りになっていたのが、子どもたちの“心の部分”です。よりよき偏差値、よりよき高校…。今の若者にすれば、もはやそれは理解できない部分です。Z世代が求めているのは、現代的な“三方よし”。己だけでなく、市民や、社会も幸せになること。偏差値で、よりよきものを求めることとは全く異なるわけです。これを大きく捉えたものが、いわゆる非認知なんです。

石塚 子どもたちにとって、非認知は自己肯定感でもありますよね。自分は価値のある人間なんだと自覚し、よりよき順位よりも自分の居場所、自分らしさをもつこと。非認知の部分は、点数にはなりませんが、生き方として、とても大切です。自己肯定感の高さが、他者あるいは社会に対して、貢献しようという思いにつながるということですね。

デジタルを駆使し、社会で活躍する人間教育を実現

石川 VUCA(ブーカ)といわれる、先の予測が困難な時代に生きるZ世代は、本質追求型。人が生きていくうえで、サディスナブルに、どう幸せに生きていくかを考える人たちなんですね。だから自分たちが成長し、世の中にでていくなかで、自分の幸せだけでなく、他者や社会の幸せをも視野に入れることができるんです。

石塚 そこに必要となるのが、現代社会にかかせないデジタル教育ですよね。

石川 ええ。デジタルを使うことで、人間の能力というものは自然と拡大されていきます。となると、予測できない未来の中で、どんな力を中学・高校で身に着けられるかが、重要となります。「星の杜メゾット」は、認知と非認知、デジタルを組み込んだカリキュラムで、いかなる状況でも対応できる思考力、判断力を育み、新しいものを生み出す力を培う“人間教育”でもあるんです。

石塚 今お話ししてくださったように、日常生活がデジタルシフトしていくなかで、学校生活においてもICT(デジタルスキル)を活用した授業は、かかせないものとなっています。検索をすれば知識を得られる時代に、学校が何かできるかというと、教室といった場所や情報知識などの“共有”です。同じく人とデジタル、人と人をつなぐのも教員の大きな役目です。社会の変化に対して、このような学校としての在り方が、重要なポイントになっていくのではないでしょうか。当校では、ただ授業で使わせることに目的をおかず、ICTをうまく活用しながら、実社会で活躍するための非認知能力を伸長する、教科学習と探究学習を実践していきたいと思っています。

校に属しながらも社会に出ていく準備となるカリキュラムは当校ならでは

石川 「星の杜メゾット」は、ブルームタキソノミーをベースにしています。このブルームタキソノミーとは、今から70年ほど前、教育心理学者のベンジャミン・サミュエル・ブルーム氏の研究グループが、知識だけで覚える教育を問題視し、何をどうしたら知識以上のことを学べるのかを整理した、教育の目標を分類したものになります。欧米では学校のカリキュラムのベースとなっていて、日本でも文部科学省の学習指導要領は、ブルームタキソノミーを意識し作られているのですが、それを公的に使うという認知はされていないのが現状です。

独自の授業改革「星の杜タキソノミー」

石塚 なぜか概念が外れているんですよね。そこで当校では、独自の授業改革として「星の杜タキソノミー」を提案しました。記憶・理解・応用・分析・評価・創造からなるブルームタキソノミーですが、残念ながら、現在の日本の学校の授業では、初動となる情報収集で終わってしまっているんですね。ある意味、言われたところをやっていればいい話なのですが、欧米的な考えからいくと、それまで集めた知識や情報をどのように整理し、使っていくまでが重要だと思います。

石川 そうですね。ブルームタキソノミーの最終点である創造は、ゼロから何かを生み出すことばかりでなく、表現をしたり、発信をすることでもあります。「星の杜タキソノミー」は、知識や理解をベースに、応用や分析的思考を重視し、批判的・創造的な視点を獲得するもの。当校が行っている総合的な探究の時間も、課題設定、情報収集、整理分析、編集・まとめ・表現の流れの通り、自分の設定した課題について学びなさいという設計になっていますよね。

石塚 はい。すでにすべての授業でブルームタキソノミーを展開しています。結果として、定期試験をなくし、知識だけを問う1年間ではないということになります。もちろん授業のなかで、単元テストとか、まとめの確認は行いますが、ブルームタキソノミーのテーブルに沿って、生徒たちの行動をタキソノミー上に落とし込み、段階ずつの評価をしていきます。

石川 今回の教育改革ではどうしても「テストがない」という話題性が、独り歩きしがちですが、ブルームタキソノミーの根拠のもとで、きちんとした評価方法があるということを理解し、安心していただきたいですね。

新たな価値を創造し、社会に貢献する生徒を育成

石塚 定期試験だと、生徒が知識をつめこむだけになってしまうので、せっかく覚えても、終了してしまえば忘れてしまうんですよね。ですから、覚えたことを再現できるような授業展開をしていくことが大切です。当校では、全体のカリキュラム自体は学習指導要領に沿った内容になるので、時間数は他校と大きな違いはないのですが、英語に関しては生徒たちが通ってきたステップが異なるため、教員がしっかりと捉え、能力に合わせた指導を心掛けています。さらにグローバルな英語を学べるオンライン英会話やサプリの活用、総合、探究学習、デジタル、課題研究など、さまざまな授業を実践しています。

石川 世の中できっと役に立つ、フィールドワークやICTなどの授業を設け、学校に属しながらも社会に出ていく準備となるカリキュラムは、当校ならではですね。

石塚 ええ。自分がしてもらいたいことを隣人にもしなさいというキリストの教えがあるように、自分のやれることをしながら、多くの人とコラボレーションして、新たな価値を創造し、輝ける未来を創りあげてほしいです。

石川 そうですね。自分が楽しいとやりがいを感じながら、多様性を存分に活かし、仲間たちと協働し貢献していける。そんな、世の中をリアルに良くしていこう、未来に向けて何かを生み出そうとする“チェンジメーカー”が、星の杜から育ってくれるといいですね。

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